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受賞者 |
受賞理由 |
作家賞 |
笠井 爾示
(かさい ちかし)
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10代をドイツ・シュトゥットガルトで過ごした作家は、一時帰国した際、母の病気を知り日本に留まる決意をした。自身も大病を患い失意の中で写真と出会い、独自の視線で日常を切り取ってきた。50歳を目前に、シュトゥットガルトを再び家族で訪れた旅の中で、初めて母を撮影し、写真集『Stuttgart』としてまとめ上げた。作家が新境地を切り拓いた作品に対して。 |
新人賞 |
中井 菜央
(なかい なお) |
雪のある風景に興味を持った作家は、新潟県津南町で、湿り気のある重い雪が作り出す独特の雪景色に惹かれた。更に毎冬、廃校に住み込み撮影する中でその地の人々と暮らしに興味を持ち、発展していった。展示を重ねる度に作家の視界の広がりと思考の深化が現れた、写真集『雪の刻』及びその前後に開催された計7回の展示活動に対して。 |
国際賞 |
石渡 真弥
(いしわた まや)
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1989年に総合メディアプロダクションのRAMを設立し、1990年「日本の現代写真3人展」(フォトフェスト’90)、2002年「岡上淑子写真展」(ヒューストン美術館)など、多数の写真展・写真集出版のコーディネイトを手掛け、海外に向けた日本の写真及び写真史の発信に重要な役割を担ってきた。これら多年の功績に対して。 |
KYOTOGRAPHIE
京都国際写真祭
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東京集中の既成メディアのあり方に疑問を感じた照明家
仲西祐介氏と写真家 ルシール・レイボーズ氏が、東京以外の場所から写真を通して社会問題を世界に発信するべくKYOTOGRAPHIEを立上げ、2013年に第1回を開催した。以来、毎年規模を拡大し、2023年は11回目となる。京都から写真を通して世界へ発信し交流し続けている功績に対して。
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功労賞 |
百々 俊二
(どど しゅんじ) |
百々俊二氏は、自身の「写真の力」は言うに違わず、写真指導者として、次世代の若き写真家と真摯に向き合い、切磋琢磨をともにして、一人ひとり強固な写真家に育て上げてきた。同時に教育者として、写真を通じてどのように生き、写真に対峙するのかを問い続けてきた。この多年に亘る功績に対して。 |
写真新世紀
(しゃしんしんせいき) |
1991年にスタートし、1,126組の受賞者を輩出したキヤノン株式会社主催の写真コンテスト「写真新世紀」が、2021年に30年の活動を終えた。若者たちの写真表現を多様化、拡張させ、その可能性に挑戦する新人写真家の発掘・育成に大きく貢献した。この多年に亘る功績に対して。 |
学芸賞 |
大山 顕
(おおやま けん) |
著書『新写真論
スマホと顔』において、撮影された写真だけでなく、スマホ・SNS・AIなど写真の周りで起こりつつある出来事すべてを「写真」の内部で考えようとする論考は、現代における写真とは何かを考える上で示唆に富む。この労作に対して。
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雑誌『写真』編集部
(代表:村上仁一編集長)
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ここ3年程のパンデミックの中、写真界も歴史ある写真誌や有名な写真賞が無くなるなど、大切な光を見失うような経験をした。そのような中、今の日本における写真表現を幅広く紹介し、未来に向けた発信を掲げる雑誌『写真』の創刊は、まさに一筋の光である。日本写真文化の質の高さと深い視点に立ち、写真の持つポテンシャルを追及する編集姿勢に対して。 |